判例研究
判例と言うと、難しいイメージがあるかもしれませんが、とっても身近にある商標についてのお話です。
実際の判例を分かりやすく解説します。みなさん是非、商標の知識を身につけましょう。
喜多方ラーメン事件
『喜多方ラーメン』と言えば、みなさん聞いたことがあるでしょうか?
福島県喜多方市のご当地ラーメンです。
札幌ラーメン、博多ラーメン、と並んで日本三大ラーメンと数えられているようです。
今回の事件は、『喜多方ラーメン』が地域団体商標として登録できたのかどうかのお話です。
地域団体商標とは、地域ブランドを保護するため、地域名称+商品名などからなる商標を、(本来なら3条1項3号で拒絶になるところ)、隣接都道府県に及ぶ程度の周知性がある場合には登録が認められている商標のことです。詳しくは、こちらへ。
例えば『松阪牛』や『宇治茶』などは地域団体商標の登録が認められています。
『喜多方ラーメン』は、全国的にも有名であり、地域団体商標の登録が認められてもよさそうですが、
結果から言うと、登録が認められませんでした。
【喜多方ラーメン事件】
平成21年(行ケ)第10433号 審決取消請求事件
原告(協同組合蔵のまち喜多方老麺会)
被告(特許庁長官)
「喜多方ラーメン」の登録が認められなかった主な理由
1.多くの業者が商標登録をしている。
喜多方市外でラーメンの提供を行っている株式会社アールシーフードシステムは「会津喜多方ラーメン\蔵太鼓」の商標を登録しており、その他にも「喜多方ラーメン」の文字を含む商標の登録を受けている喜多方市外の事業者が多数存在する。
2.人気店が加入していない。
喜多方市内でラーメンの提供を行っている「食堂はせ川」等は、原告には加入していないが、新聞や雑誌などにその紹介記事が掲載されている。
3.構成員の加入割合。
原告の構成員であるラーメン店が喜多方市内のラーメン店に占める割合は半数弱であり、統計上の視点を変えてもせいぜい6割弱にとどまるものであり、しかも、全国的に知られている有力な喜多方市内のラーメン店が原告に加入していない。
4.喜多方ラーメンのバリエーション。
喜多方市内のラーメン店のうちにも、細麺やタンメン、味噌仕立ての濃厚なスープを看板メニューにする店舗があるなど、「喜多方ラーメン」の名称(表示)が、喜多方市内において上記の太く、縮れた麺及びさっぱりした味に特徴があるラーメンを提供する、原告の構成員ないしそれを束ねる原告の業務に係る役務を表示するものとして、福島県内等で広く知られているとまでは認めることができない。
5.7条の2第1項柱書について
7条の2第1項柱書の「自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている」の要件は、3条2項の要件を緩和したものではあるが、「この要件緩和は、識別力の程度(需要者の広がりないし範囲と、質的なものすなわち認知度)についてのものであり、当然のことながら、構成員の業務との結び付きでも足りるとした点において3条2項よりも登録が認められる範囲が広くなったのは別としても、後者の登録要件について、需要者(及び取引者)からの当該商標と特定の団体又はその構成員の業務に係る商品ないし役務との結び付きの認識の要件まで緩和したものではない。」
との理由で登録が認められませんでした。「喜多方ラーメン」すでに有名になりすぎていて、
また加入構成員以外の者の使用や登録が多く認められていたことにより、地域団体商標の登録が認められなかったのですね。